継続的な出展&アドバイザーの
サポートのもと
ブランドを育み
新規販路を開拓
家庭電化製品をはじめ、産業機器、医療機器からカー用品やスポーツ用品に至るまで、実に多様なジャンルのプロダクトデザインを手掛けてきた有限会社アイ・シー・アイ・デザイン研究所。自社で開発した知育玩具〈ノシリス〉が、Gift Show出展を重ねながら百貨店での催事展開を実現するなど、販路の新規開拓へ至るまでのお話を伺いました。
経験ゼロからの出発
素人同然の出展から、
バイヤー目線での販路開拓へ
「プロダクトデザインについては長年積み重ねてきた経験があるのですが、販売することについては全くの素人。事業開始当初はとにかく手当たり次第にアプローチしていましたね。この知育玩具〈ノシリス〉は2010年の発売ですが3年くらい動きが鈍かったんです。マンパワーが少ない上に販促費用もかけられず悪循環に陥っていました」。そう当時を振り返るのは、セールスマネージャーの黒田弥生さん。発売当初は、単独で展示会に出展し、名刺をいただいた方にとにかくアプローチするということを繰り返していたといいます。
「そんなとき中小機構からアドバイザーの石本和治さんをご紹介いただきました。まずは、事業計画と現状把握、商品構成のあり方など基本的なことからスタートし、本当にさまざまな角度からアドバイスいただきました」と黒田さん。関西の大手百貨店のバイヤーを長年経験した石本氏のアドバイスのもと、商品のコンセプトや魅力を語るストーリーを明確化し、さらにそれを店頭で伝える販促ツールづくり、バイヤーが採用したくなるポイントなどアドバイスをいただきながら実践していきました。また、過去の展示会でいただいた名刺を効果的に活用するアフターフォローの方法などを一つひとつ詰めていきました。
中小企業総合展をフルに
活用して
商品にマッチした
販路との取引がスタート
また、2015年からは中小機構がプロデュースする「中小企業総合展 in Gift Show」へ出展。コストを抑えられるメリットはもちろん、中小機構ならではの販路開拓の専門的なフォローを期待しての出展でした。
「単独出展のブースは1小間3×3メートルですので1アイテムで展示するとなると空間が広すぎます。しかもお客様に対応するには常時ブースに2人以上は必要ですから、かなりコストが嵩んでいました。その点、総合展ではその3分の1ほどのスペースです。しかも、小スペースでの効果的な展示の方法についても事前の勉強会で学ぶことができました。会期中は、バイヤーさんを紹介していただくなどフォローが手厚いんですよ。それに、単独出展では立ち止まってもらえなかったバイヤーさんとの接点も多かったです」。黒田さんがそう語るように、異業種100社が参加する総合展のブースでは、各企業の招待客の目に触れる機会がある上に、石本氏のようなバイヤー経験豊かなアドバイザーのネットワークによる商談のチャンスも多いといいます。
「実際に、総合展で石本さんにご紹介いただいた大手百貨店のバイヤーさんの企画で、2017年の春に催事出店が実現したんです。バイヤーさんも驚くほどの売上を上げることができて、次につながる実績を残すことができました。初めてギフトショーに単独出展してから5年ほどでようやく〈ノシリス〉事業が離陸したと実感できました。継続して出展することで、石本さんのアドバイスやバイヤーさんが求めていることが、少しずつ理解できるようになりました。流通経費を想定した上代設定、商品コンセプトや販促ツールの重要性、売場での展開を想定した商品構成など、販路を開拓するについて5年前の私たちがどれだけ無知だったかということが、今になって改めて分かりました」と笑う黒田さん。関係性を築いてきたバイヤーさんとのコミュニケーションを深めながら、次なる展開へ向けて意欲を見せます。
新事業の販路開拓で大切なポイントは? と石本氏に問うと、「バイヤーは新規性も市場性もある魅力的な商品を常に探しています。でも商品力だけでは通用しない。どこに置いて、誰に売るのか、どんな商品構成で、どんなストーリーで伝えるのか。店頭に並ぶまでの戦略と細やかなアプローチが重要です」と、バイヤー目線のコメントが返ってきました。
「また、百貨店や専門店によって個性も異なりますし、自社の商品がどのチャネルに適しているのか、またバイヤーが何を求めているのか。リアルな人間関係を築いてきた私のような立場のアドバイザーだからこそ、つなげられる縁や伝えられることもあると考えています。中小機構の制度は、国の支援のもと中立な立場で助言できますので、ぜひ中小企業の皆さんに活用してほしいですね」と石本氏。
「つくり手の現状も、売り手のニーズも分かるプロの立場から、的確なアドバイスをもらえました。〈ノシリス〉のお客様がどこにいるのか分からず手探り状態だった5年前から、ここまでやってくることができました。新しい事業を立ち上げるとき、芽が出るまでは本当に長い時間がかかります。そんな中、私たちの想いを理解し、応援してくれる中小機構の存在があったから、事業を進めてこられたと思います」と語る黒田さん。アイ・シー・アイ・デザイン研究所では、新アイテムの充実、海外を見据えた新規販路開拓、と次のステージへ向けての取り組みがもうすでに始まっています。
[企業DATA]
有限会社アイ・シー・アイ・デザイン研究所
- 所在地
- 大阪府守口市八雲東町2-82-21-705
- 創業
- 1985年
- 事業内容
- 商品企画、製品デザイン、製品設計・機構設計、モデルデータ製作・モデル製作支援、製造支援
- URL
- http://www.ici-design.co.jp/
- 取材サポート : 中小機構 販路開拓支援アドバイザー
石本和治 - ナビゲーター : 中小機構 販路支援部 嶋田俊也
- 取材・文 : スクーデリア 瀬上昌子