成功事例

草履の未来への取り組みについてお話を伺った、専務取締役の軽部陽介さん(左)と、製造部部長の軽部聡さん(右)の写真

「中小企業総合展 in Gift Show」
出展企業:成功事例
#004軽部草履 【草履〈竹粋-CHIKUSUI-〉】山形

草履の未来への取り組みについてお話を伺った、専務取締役の軽部陽介さん(左)と、製造部部長の軽部聡さん(右)

展示会初出展で得た
多くの気づきをすぐさま反映
手編み草履の新たな
販路開拓への一歩

豊かな稲作地帯である山形県寒河江市に工場を構え、今では日本で唯一となった大正2年創業の手編み草履の製造・販売元である軽部草履。現在の草履の主な用途は、日本の伝統を重んじる祭事や芸能の世界が中心ではあるが、若い人へ、そして女性へと今までにない新たな販路開拓に向けて初めて展示会に出展することを決意。中小企業総合展in Gift Showへ出展したことで気づいた多くの販売のヒントや、展示会で得たつながりから百貨店での催事展開を実現するなど、少しずつ新たな販路開拓へと動き出している同社にお話を伺いました。

手編み草履の良さを
多くの方に直接届けたい
自ら積極的に動くことを決意

「出展にかける思いや狙いはたくさんありましたが、大きく言うと暮らしの知恵や伝統が息づく『草履』という日本ならではの履物の可能性を広げたい、その一言に限ります。2年前に地元の企業数社と合同で出展したギフトショーの会場で、中小企業総合展を見つけ、自ら展示会に出展することを決意し、翌年エントリーしました。」そう話してくださったのは、軽部草履の専務取締役であり草履加工のプロでもある、軽部陽介さんです。初めて自社だけで出展する同社にとって、手ごろな出展料、小ぶりなブースや会期前や会期中のサポートが魅力だったと言います。

「草履に興味・関心のある方とお話しさせていただく場所を作ることで、今後の可能性が広がると思ったんです」と陽介さんの写真

「草履に興味・関心のある方とお話しさせていただく場所を作ることで、今後の可能性が広がると思ったんです」と陽介さん

普段履きとして現在のメインユーザー層は年配の男性だが、少しずつ若い世代の需要も増えてきているの写真

普段履きとして現在のメインユーザー層は年配の男性だが、少しずつ若い世代の需要も増えてきている

若い人に向けての草履
時代に合わせたアップデート

そもそも、普段履きのラインナップに力を入れようと思ったのは、2、3年前のこと。京都を拠点に店舗展開をする和モダンなデザインブランドからの依頼を受けて、鼻緒にブランド独自のテキスタイルを使ったオリジナル草履を作ることになりました。アパレルショップに草履が並ぶとは当時考えてもいなかったのですが、翌年もさらにその翌年も発注をいただけ、こんなところに需要があったんだと気付きました」と聡さん。積極的に自分たちが出会いを作って知ってもらえれば草履の今までにない道が開けるのでは—。そんなヒントから細かなオーダーメイドにも力を入れ、商品ラインナップも増やしていきました。

国内に2人しかいないという手編み草履職人のひとりでもある、聡さんの写真

国内に2人しかいないという手編み草履職人のひとりでもある、聡さん

一つ一つの型に入れて圧縮することで強度のある草履になる。材料の下処理、手編み、金型圧搾、顔揃え、製品加工と全ての工程で手作業が入るの写真

一つ一つの型に入れて圧縮することで強度のある草履になる。材料の下処理、手編み、金型圧搾、顔揃え、製品加工と全ての工程で手作業が入る

カラーは、天然色の茶竹(左)と、草木染めにより茶色に染まったカラス竹(右)の2種類。(豊国を除く)の写真

カラーは、天然色の茶竹(左)と、草木染めにより茶色に染まったカラス竹(右)の2種類。(豊国を除く)

実演ができるという強み
を生かしたブースと
市場に合わせた商品ラインナップ
いう大きな気づき

「壁とか棚とか、皆さん素敵に装飾されているじゃないですか。こんなのうちも作れるかなと不安でしたが、職人のかっこよさを伝える写真や全体のデザインなど、地元の知人たちに相談してみんなで一から作りました。そんなブースに支えられながらも一番反応があったのは実演でした。材料と『草履ぼっくい』という引っ掛ける道具さえあれば出来ますし、地元ではなんて事のない風景ですが、東京の方にとっては見たことがないシーンなのではと思ったんです。」と聡さん。その読みが見事に当たり、実演をすることで人目を引き、次々と好感触を得て実際に複数の百貨店からの催事のオファーにもつながりました。

また、出展したことで「商品のラインナップを複数持ちブランド化する」という大きな気づきもありました。お客様に合ったものを適切な価格で販売しないとニーズと商品にズレが出てきてしまう。そのため様々な個性をもった商品をすべてオリジナルブランド竹粋<CHIKUSUI>とするのではなく、ベーシックな「竹粋」、そしてカジュアルな「匠」や特選の草履表をつかった「極」、山形伝統の稲藁を材料にした「豊国」と、展示会出展後に急いでその特徴ごとにセグメント化しました。「バイヤーの声やアドバイスによって、商品ラインナップの多様化のことを気づけたことも出展してよかったと思える大きな点でした」と陽介さんは当時を振り返ります。

2014年9月ギフトショー 単独出展の写真

畳1畳分さえあればできるという実演。多くの方の関心を引いた

チャンスをどう生かしていくか
今後の課題と長期的な計画の必要性

展示会での出会いから早速オファーがかかり、6月に東急ハンズ池袋店で、7月には札幌三越と阪神百貨店で実演販売を開催。若い人に興味を持ってもらえるかと不安が一番大きかった東急ハンズ池袋店では、父の日ギフトのタイミングに重なったことで想像以上の反響があったそうです。「7月の百貨店の催事では初出店ながら今後につながる課題を発見できました。10月にも催事に呼んでいただいているので、また違う層のお客様に商品を見て頂き試行錯誤していきたいです」と聡さんは長期的に草履の未来を見つめます。

東急ハンズ池袋店のエントランス部分で開催した催事。来場者の年齢層を加味したラインナップを持っていくなどの工夫もの写真

東急ハンズ池袋店のエントランス部分で開催した催事。来場者の年齢層を加味したラインナップを持っていくなどの工夫も

一つ一つの型に入れて圧縮することで強度のある草履になる。材料の下処理、手編み、金型圧搾、顔揃え、製品加工と全ての工程で手作業が入るの写真

阪神百貨店での催事「職人展」に参加

リニューアルと屋台骨の強化
戦える地場づくりへ

中小企業総合展に出展し、すぐに実演オファーがかかったこともあり、商品ラインナップの多様化などを急ピッチで行い、それに伴ないホームページもリニューアルするなど「いただいた声」を大切に即時に反映していく軽部草履。「アパレルや高級ホテルとのコラボ、そしてインバウンド向けなどやりたいことはまだまだあります。また、うちの屋台骨である祭事需要での草履も強化していきたいと思っています」と二人は今後を描きます。

展示会を出会いの場としてはもちろんの事、「気づきの場」として活用する軽部草履。草履の未来を創っていく同社の挑戦はこれからも続く。

きっちりと編まれた草履。白く輝くこの草履の原料こそ、山形でしか取れない豊国という稲わらの写真

きっちりと編まれた草履。白く輝くこの草履の原料こそ、山形でしか取れない豊国という稲わら

一つ一つの型に入れて圧縮することで強度のある草履になる。材料の下処理、手編み、金型圧搾、顔揃え、製品加工と全ての工程で手作業が入るの写真

祭り用の草履。「これでないと」と求めるお客様も多い

[企業DATA]

軽部草履株式会社

所在地
山形県寒河江市中央工業団地51
創業
1993年
事業内容
手編み草履の製造と販売
URL
https://karubezouri.com/index.php
  • ナビゲーター : 中小機構 販路支援部 嶋田俊也
  • 取材・文 : スクーデリア 瀬上昌子

過去開催実績

  • 中小企業総合展 in GiftShow 2019
  • 中小企業総合展 in Gift Show 2018
  • 中小企業総合展 in Gift Show 2017
  • 中小企業総合展 in Gift Show 2016
  • 中小企業総合展 in Gift Show 2015

※中小企業総合展 in Gift Show 2020は
開催いたしませんでした。

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